AI徒然奮闘記

連携は、罪だった。

作成者: EIJI KAKUGAWA|Sep 20, 2026, 2:01:59 AM

── 結局、いちばん外側の道具に戻ってきた話。

先日、案件の管理をAIと一緒に組み立てようとしていた。

メールが来る。作業が動く。誰かに振る。返事が来る。それを記録する。この流れを、きれいに回す仕組みにしたかった。SlackもGoogleもつないで、通知も出して、全部が自動でつながる状態を、最初は思い描いていた。

やっているうちに、私の口からこぼれた言葉はこれだった。

連携は、罪だ。

Slackに送ろうとすると通らない。スプレッドシートに直接書き込もうとすると、できない。メールの添付は取り出しにくい。何かを「つなぐ」たびに、そこで止まる。段取りの主導権が、こっちからサービスの都合に移っていく。

逆に、つながないところ——読む、文面をつくる、整える、覚えておく——は、するすると進んだ。

だったら、コピペでいい

それに気づいてから、急に楽になった。

コピペして送った方が、早い。

私がやることは、来たものをAIに渡す。文面に整えてもらう。それを自分で貼って送る。それだけ。送信も、API連携も、あいだに挟まない。挟まないから、詰まらない。

通知も、いらなかった。アラートは、すぐ来るとうっとうしい。しかも私はもう、半日に一度、無意識にメールを見ている。習慣になっている。だったら「来たよ」と教えてもらう必要が、そもそも無い。知りたいときに、自分で見にいけばいい。

翻弄されるのに、うんざりしていた

ここまで来て、自分がずっと感じていたものの正体がわかった。

SaaSやら、メガサービスやら。その境界——アカウント、権限、API、囲い込み——に、こっちの仕事の段取りが振り回されている。本当はただ、自分の仕事を回したいだけなのに。ツールを増やすたびに、覚えることも、承認することも、ログインする場所も増える。

もう、うんざりだ。

そして、その反対側にHTMLがあった。HTMLは、どのメガサービスにも属していない。アカウントも権限もいらない。ブラウザさえあれば、誰でも開ける。プラットフォームの、いちばん外側にある素の紙。私が何度も「HTMLが一番楽だ」に戻ってくるのは、たぶんそれが唯一、境界に翻弄されない層だからだ。

相手だって、つながりたくない

もうひとつ、大事なことに気づいた。パートナーの気持ちだ。

案件を一緒にやる外の人たちは、受け身の作業者であることが多い。「来たものを返す」。それが一貫した姿勢で、それはそうだ、作業だから。

その人たちに、新しいSaaSのアカウントを作らせて、権限を承認させて、別のツールにログインさせる。——たぶん、みんな心のどこかで、こう思っている。

今つながっているもの以上に、これ以上つながされたくない。

だから、こう考えた。相手がやることを、とにかく減らす。タップで状態を選ぶ。ひとことだけ補足する。コピーして返す。書く量は、ほぼゼロ。返信のために文章を組み立てる、あの地味に重い負荷が、消える。

渡すのは、HTMLファイルが1枚。開くだけ。相手の手元で完結して、外にも上がらない。相手に、何も繋がせない。これは効率の話に見えて、たぶん関係の設計の話だ。負担を課さないから、続く。

母艦は、自分の手元に置く

そうやって、方針がひとつに絞られた。

常に同期しようとしない。追いかけない。必要なのは、最終確認のタイミングだけ。情報は、知りたいときに自分から取りにいく。母艦は、自分の手元に置いておく。外とは、HTMLという中立な紙でやり取りする。

長年、ひとりで何人分もの仕事を回してきた。ずっと、管理というのは「きれいな表を作って、それを維持し続けること」だと思っていた。

でも、と思う。行と列は、紙とスプレッドシートしか道具がなかった時代のやり方だ。人間が一覧で見渡すために、無理やり格子に押し込んでいた。表は、管理の器じゃない。欲しいときに出す、ただの出力だ。器のほうは、出来事をそのまま積んでおけばいい。

これで、パートナーとのやりとりが、少し良くなるかもしれない。つながせない。急かさない。相手の手を止めない。そういう関係の回し方に、なるかもしれない。

実際に作ってみた見本が、これだ。触ってみてほしい。

→ 別タブで大きく開く(案件ボード サンプル)

── いや。表で食ってきた人間が、表はもういらないと言い出している。これはこれで、自分の足場を自分で崩している気もする(笑)。