年末の静けさの中で、今年発生した「リリース直前のちゃぶ台返し」を思い出し、深いため息をついていませんか?その徒労感の正体は、あなたの調整スキル不足ではなく、プロジェクトの構造的な「合意形成プロセス」の欠陥にあります。来年こそ同じ轍を踏まないために、今この時期だからこそ行うべき、具体的な思考の整理術と「仕組み化」のアプローチをプロの視点で解説します。
株式会社フブキ代表角川です。2025年も残すところあとわずかとなりました。
この時期になると、多くの企業で一年を振り返る総括会議が行われます。DX推進担当者やWebプロジェクトのリーダーにとって、今年はどんな一年だったでしょうか。
もし、あなたの脳裏に浮かぶのが、プロジェクトの佳境で決裁者から発せられた「やっぱり、なんか違うんだよね」という一言や、それによって発生した膨大な手戻り作業、そしてチーム全体を覆った深い徒労感だとしたら、この記事はあなたのためのものです。
なぜ、私たちは何度も同じ「ちゃぶ台返し」の悲劇を繰り返してしまうのでしょうか。来年こそ、この不毛なサイクルから脱却するために、年末の今、冷静に思考を整理する必要があります。
精神論で片付けてはいけません。「上層部の理解がない」「関係部署が非協力的だ」と嘆くだけでは、来年も同じことが起こります。ちゃぶ台返しは、構造的な問題によって引き起こされる「現象」に過ぎません。
主な原因は、以下の3点に集約されます。
「空中戦」での合意形成:
初期段階において、「スタイリッシュな感じで」「使いやすく」といった、解釈の幅が広すぎる抽象的な言葉だけで合意形成を行っていませんか?これでは、最終成果物を見た決裁者が「思っていたのと違う」と感じるのは必然です。
後戻りできない「関所」の欠如:
プロジェクトの進行プロセスにおいて、ここを通過したら前の工程には戻れないという明確な「承認ポイント(関所)」が設定されていないケースです。要件定義、設計、デザインといった各フェーズで、責任者の明確な承認承認印を得ずに進めてしまうと、いつでも振り出しに戻されるリスクを抱え続けることになります。
変更コストの「不可視化」:
土壇場での変更要望に対し、「どれだけの追加費用がかかり、納期がどれくらい遅れるか」という定量的な影響範囲を即座に提示できていないことも原因です。コストが見えないため、決裁者は安易な思いつきで指示を出してしまうのです。
では、来年こそスムーズに仕事を進めるために、どうすれば良いのでしょうか。フブキが提唱する合意形成メソッド(Fubuki CCB)の観点から、具体的な3つのアプローチを提示します。
来年は、抽象的な言葉での議論を禁止しましょう。特にデザインやUIに関する議論では、初期段階から徹底してビジュアルを用います。
年末のアクション: 今年、認識のズレが大きかったプロジェクトを振り返り、「どの段階で、どのようなビジュアル資料(ムードボード、ワイヤーフレーム、プロトタイプなど)があればズレを防げたか」を検証してください。
ウォーターフォール型であれアジャイル型であれ、重要な意思決定ポイントには、後戻りできない「関所」を設ける必要があります。
年末のアクション: 自社の標準的なプロジェクト進行フローを見直し、「要件定義完了」「デザイン方針確定」といった、ステークホルダーの承認が必須となるマイルストーンを明確に定義してください。そして、承認後は原則として要件変更を受け付けない(または追加費用が発生する)というルールを明文化する準備をしましょう。
ちゃぶ台返しが起きた時、それを感情的に受け止めるのではなく、冷静なビジネスの選択肢として提示する姿勢が必要です。
年末のアクション: 過去のプロジェクトで発生した手戻り工数を概算してみましょう。「あの時の鶴の一声は、実は〇〇万円と2週間の遅延に相当した」というデータを可視化しておくことで、次のプロジェクトで変更要望が出た際に、「この変更にはこれだけのコストがかかりますが、実施しますか?」と、トレードオフの判断を決裁者に委ねることができるようになります。
プロジェクトを円滑に進めるための社内調整や合意形成は、面倒な雑務ではありません。それは、多様な関係者の視座を統合し、ビジネスを前進させるための、極めて高度でクリエイティブな「技術」です。
2025年の徒労感を、来年の成功への投資に変えるために。この年末年始、静かな環境でプロジェクトの進め方そのものを再設計してみてはいかがでしょうか。
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社内の合意形成プロセスを「仕組み化」したいリーダーへ
フブキの「合意形成コンサルティング(Fubuki CCB)」は、プロジェクトの遅延や手戻りの原因となる人間関係やコミュニケーションの課題を、精神論ではなくロジカルな「仕組み」で解決に導きます。来期のプロジェクトを成功させたいDX推進担当者様、ぜひご相談ください。
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