語り手:株式会社フブキ 代表取締役 角川 英治
聞き手:パートナーデザイナー・ 倉又美樹氏
倉又: 角川さん、今のプレゼン、横で聞いていて圧倒されました。26年にわたりBtoB企業を中心に活動されてきたフブキさんが、今なぜこれほどまでに「制作の前段階」を強調されているのか、その理由がよく分かりました。
角川: ありがとうございます。結局、Web制作が迷走する最大の要因は、技術やデザインの良し悪し以前に「社内で合意が取れていないこと」にあるんです。長年多くのお客様と向き合ってきた結論ですね。
倉又: プレゼンでも仰っていた、公開直前に「社長と現場の意見が違う」とプロジェクトが止まってしまう現象……あれはデザイナーにとっても一番の悩みどころです。
角川: そうなんです。方針がひっくり返り、納期が数ヶ月延びる。これは関わる全員にとって損失です。だからこそ僕らは、制作以前に「合意形成(CCB:Corporate Consensus Building)」というプロセスを何より大切にしています。
倉又: 今日のプレゼンで特に驚いたのが、戦略を「パーセンテージで定義する」という手法です。あれは非常に明快ですね。
角川: そこが生命線です。例えば「既存顧客のフォローに20%、新規獲得に50%、採用に30%」というふうに、リソースの配分を経営陣と現場で最初に握ってしまう。
倉又: これが決まっていないと、制作の途中で「やっぱり採用も」「既存客向けも」と要素が後出しで増えて、結局誰にも刺さらないサイトになってしまいますもんね。
角川: その通りです。経営、営業、製造、広報。それぞれの部署が見ているステークホルダーは異なります。だからこそ一度全員で「ステークホルダーマップ」を広げ、優先順位を一本化する。このプロセスがないと、本当の意味で成果につながるサイトは作れません。
倉又: 今日の対話で、フブキさんの企画の「種」がどこにあるのかが完全に晴れました。各ステークホルダーに対して「特にどのような会社だと認知してもらうのが最適か」を明確に定義し、その定義を達成するためのコンテンツ作りを一貫して設計されていますよね。
角川: その通りです。大事なのは、それぞれのターゲットがサイトを訪れたときに抱くべき印象を先に設計し、それを具現化するためのコンセプトを固めることです。
倉又: なるほど。まず"誰に届けるか"を分けたうえで、それぞれに持ってもらいたい印象を決めてから、コンテンツに落とし込んでいくんですね。
角川: そうです。たとえば意思決定層に対して「真摯に課題に向き合ってくれる会社だ」という認知を確立したいなら、単なるスペック表だけでなく、担当者の誠実さが伝わる一口コメントや、現場の空気が伝わる実写写真が必要になる。合意形成によって、この「どのような会社だと定義するか」と「それをどう伝えるかというコンセプト」が固まっていれば、必然的に作るべきページや表現が決まるんです。
倉又: 納得しました。言葉の力で、曖昧だった会社の進むべき方向をクリアにしていく。その土台があるからこそ、私たちデザイナーも迷いなくデザインに集中できます。
倉又: 今日のプレゼンに同席させてもらうまで、フブキさんが制作に入る前に何をしているのかは、ある種「ブラックボックス」のような部分もありました。でも、これは単なる制作フローではなく、もはや「チームビルディング」そのものですね。
角川: 僕はこれを、フブキの「秘伝のタレ」だと思っています。社内だけでやろうとすると、どうしても忖度が働いて本音が言えない。だからこそ、外部の僕らがワークショップを通じて「本当は何を打ち出したいのか」を炙り出す意味があるんです。
倉又: パートナーとしても、そこまで純度の高い「パス」をもらえると、デザインの力を最大限に発揮できます。今日の時間を得たことで、フブキさんの言っていることがとても腹落ちしました。
角川: この手法を文化として根付かせたいんです。組織が同じ方向を向き、意思決定者から現場まで迷いなく判断できるようになる。それはWebサイトという形を超えた、僕らの提供価値だと思っています。
「デザインの前に、まず組織の迷いを断ち切る」。この対談を通じて浮かび上がったのは、BtoB企業のWebサイトが本来の成果を発揮できない原因の多くが、制作工程ではなく、その手前の「意思決定の構造」にあるという事実でした。
フブキが実践するCCB(Corporate Consensus Building)のポイントを改めて整理すると、次の3点に集約されます。
一つめは、意思決定者を含む関係者全員で、サイトの戦略的な優先順位をプロジェクトの最初期に確定させること。パーセンテージという客観的な指標を用いることで、部署間の認識のズレを早期に可視化し、終盤のどんでん返しを防ぎます。
二つめは、ステークホルダーごとに「どのような会社として認知されたいか」を言語化し、定義すること。この定義がコンテンツ設計の起点となり、サイト全体に一貫したメッセージを通す土台になります。
三つめは、外部パートナーだからこそ引き出せる「本音」をワークショップで炙り出し、組織の共通言語に変えること。社内の忖度を超えた率直な対話が、結果としてチームビルディングにもつながっていきます。
Webサイトは、完成した瞬間がゴールではありません。組織が同じ方向を向き、自信を持って発信し続けるための「起点」です。もし今、リニューアルや新規構築を前に「社内の足並みが揃わない」「何から手をつければよいか分からない」と感じていらっしゃるなら、まずはその「迷い」を整理するところから、ご相談ください。
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