こんにちは。かくさんこと、株式会社フブキ代表の角川英治です。
今日の朝9時に、パートナーの山上さんとSlackでこんなやり取りをしました。
山上さん:「AIコンテンツが爆発的に増えたことでマーケティングが機能しなくなってきてて、ますますブランディングが大事になってますよね」
私:「例えば、50代の男性で、鹿児島出身なら、その時代に地方で流れてた地方CMをオマージュして、歌詞にサービスのフックをのせるとか。記憶に残らせるってそういうぐらいまでやらないと残らないなーとか」
山上さん:「ロバートの秋山みたいですね笑」
この会話の後、私は「逃げるマーケティング」という言葉を思いつきました。きっかけは、前日に昔の友人と会って話したことでした。
「競合と比べてください」は、もう古い
BtoBのWebサイトを作るとき、多くの会社がやることがあります。競合他社との比較表を作る。「選ばれる理由」を並べる。「〇〇との違い」ページを用意する。
これは正直に言うと、「比較される場所に自分から入っていく」設計です。
でも、本当に強い会社は、比較される前に選ばれています。RFPが出た瞬間には、すでにショートリストが決まっている。「あの会社に頼もう」という話が、上司と部下の廊下での会話で、もう終わっている。
だとしたら、比較の土俵に上がることに力を使うより、「比較が起きる前に記憶に残っている」状態を作る方が、根本的に正しいはずです。
逃げるマーケティングとは何か
「逃げる」というと、後ろ向きに聞こえるかもしれません。でも私が言いたい逃げるは、逃避ではなく回避です。
競合が集まっている場所を、そもそも戦場に選ばない。
比較されやすい名詞の世界(「Webリニューアル会社」「ブランディング会社」)から逃げて、状況の世界(「社長が交代した後、最初の半年にWebで何をすべきか」)に移動する。これが「逃げるマーケティング」の核心です。
ブルーオーシャンという言葉がありますが、逃げるマーケティングはそれより一段深い。ブルーオーシャンは「競合がいない市場」ですが、逃げるマーケティングは「そもそもその市場という概念自体が存在しない場所に立つ」イメージです。気づかれないレベルの差別化、と言ってもいいかもしれません。
AI時代に、これが最強になる理由
山上さんが言った通りです。AIコンテンツが爆発的に増えると、「どこにでもある情報」の価値がゼロに近づきます。
「Webリニューアルの費用相場は?」「ブランディングとは何か?」「HubSpotの導入手順」——こういう問いへの答えは、AIが瞬時に生成できます。企業がわざわざブログに書いても、差別化にならない時代が来ています。
その中で生き残るのは何か。「この人にしか言えない文脈」だけです。
今朝9時に山上さんと私がやり取りした、あの会話。これはAIが絶対に生成できません。私が前日に昔の友人と会って「自分はかぎりなく比較されないポジションを選び続けてきた」という話をした、あの体験。これもAIには書けない。「この人の言葉は、どこかで読んだことがある気がしない」という感覚。それが記憶に残る唯一の条件です。
フブキが意識せずにやってきたこと
思い返すと、フブキに声がかかるときのパターンは、たいていこうです。「社長が交代したタイミングで、Webを変えたかった」「HubSpotを入れたのに、サイトと繋がっていなくて困っていた」「展示会の後、お客さんにサイトを見られて恥ずかしかった」「信頼できる人に紹介してもらった」。
これらに共通しているのは、「Webリニューアルの相見積もり」から始まっていない、ということです。相談が来た瞬間に、すでにフブキに絞られている。これは意図してやってきたわけではありませんでしたが、今思えば「逃げるマーケティング」の構造そのものでした。
実装の3ステップ
ひとつ目は、「どんな状況のときに声がかかったか」を過去の案件から洗い出すこと。RFPより前に、何がトリガーになっていたか。これを言語化すると、自社の業務文脈の入口が見えてきます。
ふたつ目は、そのシチュエーションを「状況文」でブログに書くこと。「Webリニューアルの費用」ではなく、「社長交代後の最初の半年、Webをどう変えるべきか」という状況文で。これがAIに参照されやすく、かつ「これ、うちのことだ」と感じてもらえる記事になります。
みっつ目は、「比較されない文脈でだけ動く」という覚悟を持つこと。比較が起きそうな場所には、そもそも入らない。自分が勝てる地形だけを選んで動く。
Q&A
Q. 「逃げる」と、認知が広がらないのでは? A. 逆です。比較の土俵に入ると認知は広がるかもしれませんが、記憶には残りません。薄く広くより、深く狭く刺さる方が、BtoBでは圧倒的に有効です。
Q. 自分の業務文脈の入口が分からない場合、どうすればいいか? A. 過去の受注案件を見直すのが最短です。「なぜこの会社は声をかけてくれたのか」を3〜5件分掘り下げると、パターンが見えてきます。フブキではこの分析を支援しています。
Q. 中小企業でもできるか? A. むしろ中小企業の方が向いています。大企業は「広く認知される」ことに予算をかけなければならない。でも中小企業は、絞り込んだシチュエーションの中でだけ「最初に思い出される」状態を作ればいい。
最後に。私は前日、昔の友人と話して「選択し続けたら、仕事の満足はないよ」と言いそうになって、言いませんでした。比較の土俵を選び続ける仕事は、選択肢が多いように見えて、実は消耗します。自分が勝てる地形を選んで、そこで深く刺さるコンテンツを作り続ける。これが「逃げるマーケティング」の本質であり、AI時代のBtoBブランディングの答えだと、私は思っています。
この考え方に共感した方は、ぜひフブキの合意形成コンサルティング(CCB)についても読んでみてください。