Fubuki Journal

非エンジニアがWebサイトを「怖くなく」運用するには——WordPressとHubSpot、そしてAIという第三の変数

作成者: EIJI KAKUGAWA|Aug 9, 2026, 7:54:04 AM

Webサイトの運用担当になったものの、エンジニアではない。コードは書けない。それでも「サイトを更新しておいて」と言われる——そんな担当者の方は多いはずです。

私自身、制作を発注する側の人間で、開発者ではありません。だからこそ正直に書けることがあると思い、この記事をまとめました。テーマは「非エンジニアにとって、本当に扱いやすいWeb運用の仕組みとは何か」です。

WordPressは「持ち家」、HubSpotは「高機能マンション」

まず大前提の整理から。WordPressとHubSpot CMSの違いは、住まいにたとえるとわかりやすいです。

WordPressは持ち家です。オープンソースなので、さくらインターネットでもエックスサーバーでもAWSでも、好きな土地(サーバー)に建てられるし、引っ越しも自由。サイトの実体は「ファイル一式」と「データベース」の2つだけなので、丸ごとコピーして別のサーバーに載せ替えることが普通にできます。

その代わり、家の面倒はぜんぶ自分で見ることになります。本体やプラグインの更新、セキュリティ対策、サーバー障害への対応、バックアップ。「更新通知が来たけど、押していいのかな……」というあの不安は、持ち家の維持費のようなものです。

HubSpotは高機能マンションです。建物の管理——インフラ、セキュリティ、深夜の障害対応——はすべてサービス側がやってくれます。フォームや顧客管理(CRM)、メール配信まで標準装備。その代わり、建物の外には出られません。HubSpotで作った編集の仕組みは、HubSpotの上でしか動かない。そして家賃(月額費用)は、持ち家の維持費より高くつきます。

2つの違いを整理すると、こうなります。

観点 WordPress HubSpot
サーバー・インフラの管理 自分で用意・管理する サービス側にすべてお任せ
セキュリティ・アップデート 本体・プラグインの更新を自分で判断 常に最新の状態が保たれる
非エンジニアの日々の更新 テーマやプラグインの構成次第 編集画面が統一されていて迷わない
編集画面の安定性 プラグインの相性・更新の影響を受けることがある 年数が経っても同じ操作で使い続けられる
フォーム・顧客管理・メール プラグインを組み合わせて構築 標準装備で最初から一体
費用 サーバー代 月数百〜数千円 月数千〜数万円(プランによる)
引っ越しの自由度 どのサーバーへも移設できる HubSpotの外へは持ち出せない
AIに作業を任せるとき 検証環境やバックアップなどの安全策を自分で設計 下書き・公開の分離、権限を絞れるAPIなど安全柵が最初からある

「簡単さ」の正体は、ツールではなく設計

では非エンジニアにとってどちらが簡単か。私はHubSpot派なのですが、最近あるプロジェクトの内部構造を隅々まで確認する機会があり、その理由がはっきり言語化できました。

そのサイトは、こんな構造で作られていました。

  • 1階:デザイン設定 —— 色・フォント・余白などの共通ルールが、1つの設定ファイルに一元管理されている
  • 2階:モジュール(部品棚) —— 見出し、カード、スライダー、FAQ……といったセクション部品が数十種類
  • 3階:ページの中身 —— 文章と写真。担当者が触るのはここだけ

ポイントは、3階からは1階と2階を壊せないように分離されていることです。余白や色は自由に書けるのではなく、プルダウンで「選ぶだけ」。文章を打ち間違えてもデザインは崩れない。何をしても下書き止まりで、公開前に必ず確認できる。

非エンジニアの「怖くない」の正体は、これだと思います。「何をしても壊れない」という安心感。機能の多さではなく、壊せないように設計された構造こそが、簡単さの本体なんです。

裏を返せば、こうも言えます。「HubSpotだから簡単」なのではなく、「ちゃんと設計されたHubSpotが簡単」。雑に作られたHubSpotサイトは普通に編集しづらいですし、逆にWordPressでも優れたテーマとページビルダーがあれば初日は快適です。ただ、数年運用すると差が出ます。WordPressはプラグイン同士の相性や更新で編集画面そのものが壊れることがある。「初日の簡単さ」より「3年後も同じ操作で使えているか」で選ぶべきだと思います。

第三の変数:AIに「作業」を任せるという選択肢

ここまでは従来の比較ですが、最近はもう1つ大きな変数があります。ClaudeのようなAIエージェントに、運用作業そのものを任せられるようになったことです。

実際に体験してわかったのは、AIが肩代わりしてくれるのは「調べる・写す・変換する・確認する」系の作業だということ。サイト構造の調査、ページの一括修正、画像の最適化とアップロード、設定ファイルの解読——手作業なら何時間もかかる仕事が、会話しながら進みます。ブラックボックスだった納品物の内部構造を解明して、運用マニュアルまで作ってもらう、なんてことも可能でした。

ただし、誤解してはいけない点が2つあります。

1つ、AIはサーバーの代わりにはなりません。サイトは24時間動き続ける必要がありますが、AIは話しかけたときだけ働く存在です。サイトの置き場所(HubSpotなりWordPress+サーバーなり)は、これまで通り必要です。

2つ、任せやすさは仕組み側の「安全柵」で決まります。HubSpotには「下書きと公開の分離」「操作権限を細かく絞れるAPI」という柵が最初からあり、AIに作業を任せても最悪の事故が起きにくい。WordPressは自由度が最高な分、検証環境やバックアップといった柵を自分で用意する規律が求められます。

まとめ:非エンジニアのための現実解

整理すると、私の現時点での結論はこうです。

  • 担当者が非エンジニアで、問い合わせ管理まで一体でやりたいなら——壊れない設計のテーマを載せたHubSpot。日々の更新は担当者自身、設計や変更はAIと専門家に投げる
  • コストと自由度を優先し、近くにエンジニアがいるなら——WordPress。AIの守備範囲は最大になるが、安全柵の設計込みで考える
  • 迷ったら——月額費用の差は「保守と安心を買う代金」と考えると判断しやすい

そして何より。ツール選びと同じくらい、「壊れない設計」をしてくれる作り手を選ぶこと。簡単さは製品のスペック表には載っていない、設計の質の中にあります。

株式会社フブキでは、HubSpotを活用したWebサイト構築・運用支援を行っています。HubSpotが向くケースも、そうでないケースも正直にお伝えします。「担当者が自分で更新できるサイトにしたい」というご相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。