Q: ご自身の創作活動について、どのようなコンセプトをお持ちですか?
A: 私は、自分のアウトプットの根源として創作活動をしています。表現という言葉が適切かどうかわかりませんが、仕事ばかりしていた私が、石黒さん(石黒健治氏)との出会いを経て、**「作品はこうやって作るんだ」**ということに気づきました。
私にとって、写真という創作活動は、作品そのものよりも、それをどう見せるかが重要です。具体的には、「展示7割、写真3割」の比重で考えています。作品を作ることの最大の意義は、その結果として「場」が生まれることです。私の作品が埋め尽くされた空間に、見に来てくれた人たちが、作品に対して好意的な解釈をしてくれる。このサイクルが大切なんです。
最初は、周りのプロカメラマンからは「お前もやるのか」と冷たい目で見られていました。1年目、2年目と展示を続けても、みんな黙って帰っていくような状況でした。しかし、年に一度のペースで真面目にやり続けること3〜4年が経つと、状況は一変しました。年一で展示を続けているカメラマンが少ないこともあり、「真面目にやってるじゃん」と評価されるようになり、急に自分の作品が「通る」ようになったんです。それは、セルバンテス文化センターでの海外展示など、場所に関係なく起こった変化でした。
Q: 写真以外にも、音楽やダンス、映像など、幅広い活動をされていますね。これらはどういう意味を持つのでしょうか?
A: 私は、孤独に暮らすのは無理な人間です。作家として人とコミュニケーションを取ろうと思った時、そのベースになるものがほしいと考えていました。それが、写真、音楽、映像、そしてダンスといった表現活動です。
昨年、ライブを行った際に、最後に踊ってしまったんです。その時、現場にいた人たちが「何が起きたんだ?」と驚いているのを見て、**「これだ!」**と思いました。音を肌で感じるような、言葉を超えた体験が重要だと気づいたんです。
私の創作活動の根底には、**「プリミティブ(根源的)」**な思想があります。「これは元々何なんだ?」という問いを常に持つことです。音楽ライブでマイクを使わない「アンプラグド」にこだわるのも、その一つです。
この考え方は、オーディオ世代である私自身の体験にも基づいています。ニール・ヤングが「MP3では音楽の良さが伝わらない」と自ら新しいファイル形式を開発した話を聞いた時、私はがっかりしました。なぜなら、人間は馬鹿ではなく、デバイスがどうであれ、心に響くものはフィルタリングして届くはずだと信じているからです。
一方で、SP盤(Standard Play)レコードには、深い価値を感じています。100年前の蓄音機でクラシック音楽を聴く会に参加した際、そこにいたプロの音楽家が、そのSP盤にしか残されていない演奏者のニュアンスを聴き取るために来ていると知った時、**「SP盤(Standard Play)レコードも楽器なのだ」**と感銘を受けました。配線の良し悪しや機材のこだわりではなく、その本質的な価値を求めている人がいるという事実に、私は感銘を受けたのです。
Q: デジタルプリントに複雑な感情を抱かれているようですが、その理由は何ですか?
A: デジタルプリント自体が嫌いなわけではありませんし、デジタルカメラで撮影することも好きです。しかし、作品として真剣に考えた時、そのディテールに違和感を覚えることがあります。寄れば寄るほど、その「気持ち悪さ」が際立ってしまう。
だからこそ、私は引いて見せるような、大きなパネルで展示したいと考えています。3メートル先から見るような作品であれば、デジタルプリントの細部が気にならず、視覚的に心地よい体験を提供できるはずです。
Q: どのような作品を制作していきたいですか?
A: 私は、二つの大きなテーマを追求したいと考えています。
一つは**「泣ける写真」**です。これは、戦場カメラマンが撮った悲劇的な写真のように、特定の文脈で泣かせるものではありません。鑑賞者が自分の過去の体験とは関係なく、「なんだかわからないけど、泣いてしまった」と感じるような、心に深く訴えかける作品です。展示会場で多くの人が涙を流すような状況が、私にとっての最大の成功だと考えています。
もう一つは**「時間を統合する」という概念です。これは、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』が、過去と現在を統合しようとした作品だと解釈したことがきっかけです。この壮大なテーマを表現する被写体として、何百万年も前から存在し、私たち人間とは全く異なるタイムラインを持つ「石(鉱石)」**に魅力を感じています。
Q: 作品制作の手法について、何か新しいアイデアはありますか?
A: 最近、夢やふとした瞬間に新しいアイデアが生まれています。
角川さんの創作活動について、どう思われますか?
A: 角川さんの創作活動の根底には、**「物質」**に対する深い洞察があると感じます。プラチナプリントやガラス工芸のように、物質と物質が組み合わさることで、全く別の次元へと変容(トランスフォーム)するマジックが起こります。アーティストとは、その魔法をかけることができる存在です。
デジタル作品のクールな印象とは対照的に、物質としての写真の魅力にこだわっている点は、まさにアーティストとしての道を選んでいる証拠だと思います。
また、ニール・ヤングの話ではないですが、アーティストが作品をどのような形で世に送り出すかは非常に重要です。コマーシャルとして売るのか、社会貢献として行うのか、あるいは純粋なアーティストとして作品を残すのか。そのアウトプットの選び方で、作品の価値が大きく変わってくるのだと思います。
Q: 創作活動を続ける上で、何か心に残る言葉はありますか?
A: 石黒さんから言われた「泣ける写真が撮れるかもしれないから頑張れ」という言葉が心に深く刻まれています。これは、私の創作活動の重要なテーマになっています。
また、石黒さんの「寝かせておけ」という教えも大切にしています。最新作を出さなければ作家ではないという考え方もありますが、私は過去に撮影した作品が何年も経ってから再び輝きを放ち、自分自身を再発見させてくれるという、写真の醍醐味を感じています。
今後も、音楽、写真、ダンス、映像といった様々な表現手法を統合しながら、時間を統合するというテーマと泣ける写真という目標に向かって、創作活動を続けていきたいと考えています。
実際動画は、もっと長いです。。見られる方はいないとおもいますが、是非。爆