腑に落ちる、サービスの種

CRMの、Rを取り戻す。

作成者: EIJI KAKUGAWA|Sep 20, 2026, 12:53:51 AM

── 請求一覧から始める「つながりの定義」

連休の朝、AIとTODOを仕分けていた。

60件ほど並んだタスクを午前と午後に振り分けていく。眺めていて、あることに気づいた。

ほとんどが、今つきあっているお客さんの仕事だった。ページの修正、保守の提案、公開後の追加、請求。

新規の案件より、続いている関係のほうがずっと多い。

「CRMって、そもそも何の略でしたっけ」

仕分けながら、ふと思った。

今つきあっているお客さんの向こうに、これまで一緒に仕事をしてきた数百社がいる。

その人たちと、これからどうつながればいいんだろう。

そのとき、改めてAIに聞いてみた。

「Customer Relationship Management。顧客との関係を管理する、という意味です」

そうだった。

CRMと聞くと、顧客情報を入れておく箱を思い浮かべていた。

でも本来の主語は、Rのほうだ。

提案は、している

26年、Webを作ってきた。

今は、公開して終わりになるお客さんはほとんどいない。保守で、追加の相談で、つながり続けている。

世の中の流れが変われば、提案もする。スマホ対応、CMSの移行、HubSpotの導入、最近ならAI検索への対応。お客さんのサイトが古くならないように、その時々の手を打ってきた。

ただ、振り返ってみると、その提案はほとんどがWebの中の話だった。

Webの外にある、顧客接点

お客さんとお客さんのお客さんがつながる場所は、サイトだけではない。

営業担当の訪問、展示会、電話の応対、請求書に添える一言、年賀状、紹介、採用の面接。どれも立派な顧客接点だ。

お客さんにとってのCRMは、本当はこの全部のことだと思う。

でも、そこまで手を伸ばすには人が足りなかった。Web制作の会社が、営業の流れや紙の案内状まで見るのは、正直、無理があった。

AIがあれば、届く

ここが変わってきていると思う。

請求の履歴を読む。メールのやり取りから、誰が本当の窓口かを拾う。休眠しかけている取引先を毎月洗い出す。一人ひとりに合わせた声かけの文面を下書きする。

これまで人を張り付けないとできなかったことを、AIなら、ひとりでも十分に回せる。

だとすると、私が手伝える範囲も、Webの外まで広げられる。

そのために、まず決めておきたいことがある。

「つながりの定義」

登場人物(ステークホルダー)ごとに、どういう付き合い方をするか。それを決めること。

しかも理想ではなく、使える時間から逆算して決める。

たとえば、関係づくりに使える時間が月40時間あるとする。既存のお客さんに30%を振るなら、12時間。1社30分なら、月に24社。

残りの会社には、メルマガや記事のような「読みに来てもらう接点」でつながる。

人の手でつながる会社と、仕組みでつながる会社を分ける。重みを付ければ、定義は自然に決まる。

道具の話ではない

ここで「HubSpotを入れましょう」と言いたくなる。私はHubSpotのパートナーだし。

でも、たぶん順番が逆だ。

どの会社にも、すでに材料はある。

請求一覧:誰と、いつ、いくら取引したか
取引先一覧:会社名と、請求書の宛先
メールの履歴:実際に誰とやり取りしていたか

この3つは、どんな会社でも経理か誰かが持っている。

基本の手順

私が考えている流れは、こうだ。

1請求一覧と取引先一覧を書き出す。
会社ごとに、最初と最後の取引日、累計の金額をまとめる。

2メールの履歴と突き合わせる。
請求書の宛先は経理の方のことが多い。実際の窓口が誰だったかは、メールにしか残っていない。

3つながりの定義を決める。
関係の種類(取引中/保守/過去の取引/紹介者)と、接点の温度(反応なし/読んでくれている/返事がある)を掛け合わせる。

4時間の予算と重みを入れる。
どの層に、人の時間をどれだけ使うかを決める。

5毎月、振り返る。
段階が変わった会社を見る。休眠に入った会社、久しぶりに反応してくれた会社。

道具は、表計算でもいいし、CRMでもいい。

大事なのは、請求一覧という会社の中にすでにある言葉から始めることだと思う。

ひとり社長の、関係の持ち方

これからの経営は、1000人規模にでもならない限り、ひとり社長のような形になっていくと思っている。

人を増やさずに、数百社との関係を保つ。

記録と見回りはAIに任せて、人は「声をかける判断」と「会う」ことだけをやる。

一方的に売り込むのではなく、ゆるやかにつながり続けるCRM。

合意形成の、続き

もうひとつ気づいたことがある。

このつながりの定義は、お客さんと一緒に決めるものだ。

どのステークホルダーを大事にして、どこまで踏み込むか。それはお客さんの価値観そのものだから。

だとすると、これもまた合意形成だ。

サイトの設計で「どう思ってもらうか」を決めて、同じ流れで「どうつながり続けるか」も決める。そうすれば、Webの中だけでなく、お客さんの顧客接点全体を一緒に設計できるようになる。

東京で、腑に落ちるお手伝いをしている者として、ここまでやれたら本望だと思う。

── とはいえ、まず自分の請求一覧を開くところからだ。たぶん、見たくない数字も出てくる(笑)。