「現代の家は漆喰を活かしきれていない」防カビ効果はどう出す?
美しい仕上がりで人気の漆喰。近年では環境負荷の低さ、身体への優しさから注目度が高まっています。前回は、今までの常識を覆す漆喰についてご紹介しました。しかし、瀬戸漆喰本舗代表取締役の佐藤文弘氏は「残念ながら今の住環境で、漆喰の効果を最大限活かすことは難しい」と指摘します。
「漆喰の厚塗り」で、効果を発揮
――前回のお話はショックでしたね。現在の家で、漆喰の調湿・防カビ効果を発揮させるには、どうすればよいのでしょうか?
ポイントは厚めに塗って、漆喰の持つアルカリ性を維持することです。表面は中性化しても、内部はアルカリ性が長期間持続します。簡単に分厚く塗ることができ、また骨材に仕掛けをしてあることで、アルカリ性能を長期間発揮します。
――例えばマンションの室内を、素人がDIYで塗ることもできるんでしょうか?
可能です。高校生が施工するなど、扱いやすいのも特徴です。ただ美しく仕上げるためにはプロに頼むことをお勧めします。うちでは通販サイトで漆喰を販売するだけでなく、左官職人さんも紹介しています。信頼できる職人さんが全国にいますんで、お気軽にご相談下さい。
施工面積 | 22平米 | 16平米 | 20平米 | 51平米 | 15平米 |
必要量 | 12袋 | 7袋 | 12袋 | 70袋 | 15袋 |
下地 | 石膏ボード | 石膏ボード | 土壁 | 木ずり下地 | 壁紙下地 |
参考価格 | 19万円 | 4万8,000円 | 10万円 | 32万円 | 14万円 |
備考 | クロスの剥ぎ手間、 下地処理含む |
下地処理含む | 養生のみ | 養生のみ | 養生のみ |
「シックハウス撲滅」を目指して
――そもそも御社はなぜ漆喰を扱うことにしたのですか?
会社は親父が立ち上げたんですが、室内の化学物質で体調が悪化する「シックハウス症候群」に家族が悩んでいて。ホルムアルデヒドを断つ、極力症状が出ない家づくりを追求した結果、漆喰を含む自然素材を活用するようになりました。輻射熱や風の流れを活かした「呼吸するような」快適な家づくりが実現できたんです。
特に石膏ボードは便利であり不可欠な建材なのかもしれませんが、接着剤なども含め影響を受ける人がいるのも事実です。また廃棄時には、扱いによっては硫化水素が発生するリスクもあります。
――石膏ボードの廃棄については環境負荷も高く、近年はその扱いが社会課題の一つになっていますね。
そうした点もあり、SDGsに関する問い合わせが相次いでいるんだと思います。ただ、うちは創業当初から変わらないモノづくりを続けてきて…。今までは「そんな昔のやり方じゃ、商売にならない」なんて言われてきたので、戸惑いもあります(笑)。
そもそも里山に代表されるように、日本の文化と持続可能性は親和性が高い。国連のSDGsとか言ってますが、逆に伝統文化を学び、世界に発信することもできるんじゃないかって思ったりします。
――建築技術をはじめ、伝統のなかに社会の持続可能性を向上させるヒントがたくさんあるんですね。
そうはいっても、お客様のニーズは最新技術を用いた「高気密高断熱住宅」。これに対し、うちができることを提案していく必要があります。
人が生活していれば湿気は必ず出ますが、高気密高断熱が故に、ちょっとした湿気もカビを増殖させます。そのために24時間換気設備が不可欠になりますが、今度はエネルギーの消費量も増えます。ここで調湿効果と防カビ効果が高い「瀬戸漆喰」がお役に立てるのではと思ってます。
うちの企業理念は「シックハウス撲滅」。うちの漆喰は分厚く塗る必要があるので、コスト面にも配慮しています。また、企業理念を実現すべく、なるべくたくさんの人に使ってもえる価格設定にしています。
例えば壁の一つの面だけ漆喰に変えたとしても、室内干しの洗濯物の乾きが変わります。使ってもらえばその良さが伝わるので、多くの人にこの製品の良さを知ってもらいたいです。これからも、快適な住空間をつくり、人が健康に生活できる家づくりをしていきたいですね。
