山梨で、地元の企業とSNSやAIの仕事をしている若い起業家と、夜に1時間ほど話しました。最初の問いは「今、どんな仕事がいいんですか?」。終わる頃には、新しいサービスがひとつ生まれていました。営業もやる、秘書です。
この記事は、その1時間の記録です。そして、フブキが合意形成コンサル(CCB)でやっている「ステークホルダーマップ」と「シナリオ」の作り方を、誰でも使えるツールにして置いておく話でもあります。
柱は、何本ですか
彼女の仕事は、ふたつの軸に分かれていました。ひとつはSNS。もともとここから始まった人で、個人とつながっている。もうひとつは地域の実業。コンサル、SNS運用、最近はホームページも作っている。支援機関の仕事を通じて、3年かけて少しずつ顔が広がり、金融機関や企業から仕事を紹介されるようになってきた。
本人がはっきり言ったことがあります。「ここで集客をする気がない」。
これは大事な言葉です。SNSから始まった人ほど、数を追うモデルに引っ張られる。でも本人は、そっちに行きたくない。だったら、行かなくていい道を設計すればいい。
成果を、約束しない
私が最初に言ったのは、「成果を求められる仕事はしなくていいと思う」でした。
都会じゃないから、です。「こうやったらうまくいきます」「問い合わせが何件来ます」というチャンネルで仕事をすると、疲れる。うまくいかなかったときも疲れるし、実際そんなものは、ほとんどない。
「失敗することは絶対にあります。でも、早く知ることも仕事です。成功や問い合わせの数を約束する仕事は、私は受けられません」
だから最初から言っておく。そう言える人は、すごく誠実に見える。そして相手も、数を強いてこなくなる。
月15万円でSNS動画を作っている案件の話も出ました。私の意見は「最適解は3万円かもしれない」。四半期に1万円だけ広告を打って、原価を聞いて、それをやる価値があるのかを一緒に計算する。下げることで、信頼が上がる場面があります。
営業もやる、スーパー秘書
話しているうちに見えてきたのは、彼女の本当の強みでした。傾聴力と、体が動くこと。
地方の社長は、体を動かさないとできないことを山ほど抱えています。既存のお客さんに四半期に一度顔を出す。交流会で、決めたターゲットとだけ名刺を交換する。大手との商談に同行する。それを「私が引き受けます」と言った瞬間に、ものすごい価値になる。話を聞いて文字起こしして、正確なレポートを毎週返す。参謀であり、広報であり、営業もやれる。
名前は、スーパー秘書。
売り方も決めました。まずは5社だけ。月5万円で、3ヶ月だけ。「3ヶ月で何をやってくれるの?」と聞かれたら、「見ててください」。週に1回は必ず何かしら連絡を取り、自分がやっていることを開示する。3ヶ月後、下手に社員やバイトを雇うよりいいと思ってもらえたら、本契約に進む。
一回、盛る。
途中で私は、47都道府県に地域担当を置いて、年に一度みんなで東京でランチをする、という話までしました。
これは私のいつものやり方です。一回、できるかできないか分からないところまで盛る。そうすると相手は「言いすぎですよ」と、自分の実態に戻る。一晩たって戻ったところが、たぶんちょうどいい。
ノウハウは全部フリーで渡す。それで這い上がってくる人がいたら、その地域を任せる。寄り合いが嫌で、ゆるやかにつながりたい人は、地方にたくさんいます。
関係者を、全部並べる
話の後、録っておいた文字起こしをAIに読ませて、CCBの手順でステークホルダーマップを起こしました。
まず、関係しそうな相手を全部出す。新規の顧客、既存の顧客、紹介してくれる支援機関、金融機関、一緒に仕事をする仲間、SNSで見ている人、メディア。話の中で実際に出た相手と、可能性として挙げた相手を分けて、30件ほど並べました。
次に、一つずつYESかNOかを決める。そして、YESにした相手に構成比を振る。
構成比は、ヒアリングがどれだけ埋まったかではありません。どの相手にどれだけリソースを割くかという、意思決定です。合計100%。均等に配るのは、何も決めていないのと同じです。
偏りこそが決定です。
今回は、新規の顧客に35%、紹介元になる支援機関に20%を置きました。集客しないと決めた人にとって、紹介してくれる人は、顧客と同じくらい大事な相手だからです。
印象は、相手が言われて嬉しい言葉で
構成比が決まったら、相手ごとに「与えるべき印象」を書きます。これがシナリオです。
コツは、自分の主張ではなく、相手から見た存在として書くこと。地元の社長にとっては「体を動かさないとできないことを丸ごと引き受け、毎週の動きを正確なレポートで返してくれる、営業もできる唯一無二の右腕」。紹介元の支援機関にとっては「紹介した事業者を最後までフォローしきってくれる、安心してつなげられる専門家」。
同じ人でも、相手が違えば、思われたい姿は別物になります。まとめて1行で済ませない。
誰でも使えるように、置いておきます
この手順を、そのままツールにしました。
ステークホルダーマップ&シナリオ(無料)
- 関係しそうな相手を並べて、YES/NOを付ける
- YESの相手に構成比を入れて、合計100%にする
- 保存するとシナリオのExcelができる。「与えるべき印象」と「動線」を書いて戻す
- マインドマップと完成版のExcelができあがる
「記入例を見る」を押すと、今回の秘書サービスの例(架空化したもの)が入ります。入力した内容はブラウザの中だけに残り、どこにも送信されません。メール登録もいりません。
合意形成の、続き
ツールでできるのは、ここまでです。
本当の合意形成は、関係する人が同じ場に集まって、この構成比と印象を話し合うところにあります。誰が何を言い、誰が黙ったか。その場の揺れを見るのは、AIにはできません。
それでも、ひとりで起業した人にとっては、自分の頭の中を一度並べてみるだけで、次に会いに行く相手が見えてきます。彼女の場合、それは5社の社長と、紹介してくれる人たちでした。
会社でちゃんとやりたい方は、合意形成ワークショップ(CCB)の話を聞きに来てください。